高齢者や障害者の方が、悪徳業者に騙され財産をまきあげられる被害があとをたちません。悪徳業者は、高齢者・障害者を狙っています。特に一人暮らしの方は要注意です。理由は単純です。
お金をもっているし、だましやすいからです。悪徳業者からだまされたおじいちゃん、おばあちゃんから、お話をうかがっていると、本当にいい人が多いです。なかには、ご家族に連れられて相談にきているのに、だまされたことを認めず、勧誘者は、いい人だったという人もいらっしゃいます。悪徳業者に一度目をつけられると、複数の業者が次から次へとあの手この手の方法で勧誘してきます。そして皆手練れの人たらしですので、一見頼りがいのあるいい人に見えるのです。例えば、悪徳業者は、複数の業者にだまされているおばあちゃんから、その業者は悪い業者だ、お金を取り戻してあげるといって近づき、取り戻したお金を自社の投資にあてるようにすすめ、さらに被害金額を拡大するといった例があります。
インターネットの発達した現在、確認しようと思えば、悪徳業者か否かは判断できるかもしれません。国民生活センターのサイトでは行政処分歴を掲載していますし、様々な情報交流サイトで書き込みもされているでしょう。しかし、高齢者の方で、インターネットを駆使して情報収集をされている方は少ないと思われます。まさしく高齢者は情報弱者です。このような消費者被害を防ぐには、ご家族や介護関係者の方が普段から、高齢者の方の変化に目を傾ける必要性があります。不幸にも高齢者の方が悪徳業者に騙されているような兆しを発見したら、直ちに当事務所までご連絡ください。
短期間かつ被害金額が多額に及ぶものとしては、国内先物取引、海外先物・海外先物オプション取引、外国為替証拠金取引(FX取引)、ロコ・ロンドン貴金属取引などの投資被害があります。先物取引や外国為替証拠金取引などは、レバレッジをきかせ少額の証拠金で多額の取引をすることができるため、ハイリスク・ハイリターンであるとされていますが、個人投資家で利益を得ることができるのは、相当の時間をかけて勉強し知識を得て、時間も十分にかけて実践している人で、片手間でできるような取引ではありません。要は博打なわけですが、最近では、色々な媒体でFX取引を喧伝しているため、その取引に対する拒否反応が薄れているように感じます。しかし、必ず儲かる商売はありません。得する人がいれば損をする人がいるのは当たり前の話です。そして、これらの取引は、極めてその仕組みが複雑です。取引をするためにはその仕組みを理解し、どうすれば儲かるのか、損するのかを明確に理解しておく必要があります。だからこそきちんと勉強して取引に入ることが重要なのです。自らすすんで取引をするのは、まさしく自己責任なのですから、それで損をした場合には仕方ない側面もあります(ただ、なかには業者に嵌められて多額の損失を被った場合、過失相殺される可能性は高いですが、損害賠償請求が認められる例もありますので、簡単にあきらめる必要はありません)。
しかし、投資経験のないおじいちゃん、おばあちゃんが、業者に勧誘されて取引を開始し、業者に取引を一任していた場合については、話はまったく異なります。つまり、そのような仕組みが極めて複雑、かつ、ハイリスクな取引をするためには、自分でそれを勉強し取引の仕組みを理解できる適合性が必要とされます。投資家の年齢、判断能力、理解能力、取引経験、社会経験、収入、資産等を総合的に勘案して、その投資家の取引の適格性を判断すべきなのであり、この適格性を有しない者を業者は、そもそも勧誘してはいけないのです。
そこで、業者には、主に取引適格性を有しないこと、適合性に反することを主張して争っていくこととなります。
未公開株商法についてはよく耳にすると思います。「近々上場する予定で上場すれば、確実に価格が跳ね上がります。縁故者にだけ適正価格でおわけしていますが、今だけ特別に未公開株を購入することができます。」などと述べて勧誘をしてきます。ただ、未公開株というのは、譲渡が制限された株式ですから、上場されなければただの紙切れです。また、仮に上場されたとしても、思惑どおりの高い株価になるかなど予測できません。
そもそも、日本証券業協会は、平成9年7月から非上場会社の株式を売買するためにグリーンシートという制度を設け、自主規制で原則として「グリーンシート銘柄」を除いてその取引を勧誘することを禁じています。これは特定の未公開株でない限り、投資の適格性を有しないことを日本証券業協会が認めているということで、グリーンシート銘柄以外の未公開株の購入を勧誘された場合は、「詐欺」と考えても間違いないといえるのです。
未公開株を売りつけられた場合、不法行為である可能性が高いです。即時に返金、損害賠償請求をしましょう。もたもたしていると販売業者はつぶれてしまいます。時間がたてばたつほど回収可能性は低くなります。
高齢者・障害者の方が狙いうちされる商売として、次々販売というものがあります。例えば、この種の被害は、販売業者が一人暮らしの高齢者の自宅に押しかけ、ぐっすり眠れて健康になれるとのふれこみの布団を、執拗に長時間粘って買わせることからはじまります。これで買ってしまったら、いい「カモ」が見つかったことになります。同じ業者が数日後やってきて、今度は遠赤外線のでる毛布を、その数日後には除湿剤を買わせます。そして、次次に健康商材を買わせます。しばらくすると、他の業者がやってきて、また、似たようなものを買わせます。被害金額はどんどんふくらんでいきます。
しかし、なぜこのように次々と販売業者がやってきて高額な商品を買わせていくことができるのでしょうか。その秘密はクレジットにあります。つまり悪徳業者が販売した商品をクレジットで購入すると、悪徳業者はクレジット会社から商品代金を受領し、クレジット会社は消費者にクレジット代金を請求することになります。そして、悪徳業者の問題が発覚した時には、すでに業者はつぶれているか、違法に稼いだお金をどこかに隠して返金に応じず、クレジット会社の消費者に対する請求だけが残るという関係になるのです。
では、このような被害にどう立ち向かえばいいのでしょうか。
高齢者の方に限らず、事業者と一般の方との取引は、ほとんどの場合「消費者取引」となります。勧誘の態様によっては、消費者契約法を用いて、取消・無効を主張していくことになります。また、上記の布団の訪問販売など特定の契約類型に属するものは、「特定商取引」と言われ、特定商取引に関する法律によって、クーリングオフの主張や契約取消の主張をすることが認められています。クーリングオフの主張は、「特定商取引」の内容によって、8日ないし20日と違いがありますが、訪問販売の場合は、8日間です。
ただ、実際のところ、弁護士のところに相談がくるのは、クーリングオフ期間が経過して、業者が解約に応じてくれない場合がほとんどです。しかし、あきらめることはありません。特定商取引法は、契約時に厳格な要件を定めた書面の交付を義務づけており、悪徳業者は不備記載のことが多々あるため、クーリングオフ期間がそもそも進行していないとして争う余地はあるのです。また、先の例で、クレジット会社が取引に介在している場合には、クレジット会社に対し、割賦販売法で認められた支払い停止の抗弁を主張することになります。さらに、平成20年6月18日に割賦販売法が改正され、この日より1年6ヶ月以内に施行されることになりました。
この改正割賦販売法では、1,クレジット会社に訪問販売等を行う加盟店の行為について調査することを義務づけ、不適正な勧誘があれば消費者へ与信することが禁止され、また、2,クレジット会社に対し、指定信用情報機関を利用した支払能力調査を義務づけるとともに、支払能力を超える与信が禁止され、さらに、3,訪問販売等による売買契約が虚偽説明等により取り消される場合や、過量販売で解除される場合、クレジット契約を解約し、消費者がすでに支払ったお金の返還も請求可能となります。よって、改正割賦販売法が施行された後は、消費者が戦う武器を得ることになり、このような被害も多少は減ると思われます。もっとも、悪徳業者は様々な法の抜け道を探して近づいてきますので、注意を怠ってはいけません。